あくいの孫

25歳でまだ大学生やってる人間です

恋愛観論壇その壱(仮)

 僕は自分の恋愛が下手くそだ。恋愛の上手い下手を何をもって決めるかはわからないが、他人の恋愛をかいがいしく世話したり、付き合えもしなさそうな女性と頻繁に会っていたりと、そんなことをしている暇があるならマッチングアプリに勤しめよ。ともかく、自分の恋愛が、少なくとも中学生以降これまで実っていない現状を考えると、自分の恋愛が下手くそと言って差し支えないだろう。

 最近武井と飯塚(大学でのゼミの同期)とご飯に行った。お好み焼きの予定だったが、なぜかその日は行きたいところが軒並み休業中だったので、仕方なく近くにあったエスニックの店に入った。それぞれ頼みたいフォーを頼んだあと、急に武井から「あくいって毎回、”クラスで一番かわいい娘”しか狙わないよね」と言われた。武井とはよく二人で恋愛相談というか、最近好きな人いない?何もない?そうですか、というやりとりをしているので、逆になんかあった時も話している。もちろんそのときに写真も見せることになるのだが、見せる度にそんなことを言われていた。飯塚にも教えて一緒にバカにしてやろうというのだろう。

「そういう深窓の、女の人?を狙うのはみんな中学か高校で卒業するんだよ」
「令嬢な。おれは高校が男子校だったから、まだ大丈夫」
「高校にいたの6年前でしょ。もう高校の3年分は取り返してんじゃん」
「うるさい」

武井は言葉が荒い割に、妙に核心を突いてくる。熱血ヤンキーか。飯塚はずっとそれを聞いて笑っている。

「しょうがないだろ。気になるんだから。」
「普通は、そういうのを理解して、だんだん自分のちょうどいいとこを探していくんだよ。いつまで夢見てんのさ」
「誰もが目を奪われてく完璧で究極のアイドル見つけたいんでしょ」
「それ金輪際現れないじゃん」

飯塚はぽろっと、こういうパンチラインを打ってくる。上手いのがさらに腹立つ。

 なんて馬鹿話をしていて、ふと昔、唯一付き合った中学生のときの彼女を思い出す。その子のことはめっちゃかわいいと思っていたし、だから付き合った。でもクラスの友達から、しきりに、「あんまかわいくなくね?笑笑」って言われ続けた。言われ続けて、だんだんと彼女の顔が直視できなくなった。バカにされるのがなによりきつかった。結局、適当な理由を付けて別れた。

 このことを二人に話すと、飯塚が
「それすごいわかる。例えば部活の先輩に恋愛相談をするとき、写真見せてって言われて見せたときに、あんまり可愛くないと、あ~みたいな顔されるの、けっこう腹立つよね」
と返してくれた。この例えにも自分は覚えがある。バイト先のバーで、ちょっと仲の良い常連さんに恋愛相談をさせられたとき、あんまり顔が可愛くなくて、あ~みたいな顔をされてから、できるだけ写真を見せないようにしてるし、もう適当な人を選んで見せているところがある。写真の人には申し訳ない。
 すると、武井が
「それ、女子でもあるよ。女子が写真見せたときは、その後絶対大学は?とか会社の話とかになるの、男子は見た目だけど、女子は社会性みたいなところで評価わかれる。いくら顔がかっこよくても、実はアルバイトしかしてなくて...ってなるとあ~ってなる。逆に顔がそんなに良くなくても大学とか会社がよかったりすると、いい人捕まえたね!ってなる。」
思わず、はぁなるほど!と言っていた。今思えば昔からあるあるのように語られる事象だが、自分事として考えると、思わず膝を打ちたくなるものだ。
「女子は、自分の最低限いける生理的対象から、付き合う相手を選んでいくんだよ」
「でもそれは、ある程度顔が整っていたり、学歴とか収入とかがあったり、持っている人の感覚じゃないの?武井さん顔整ってるし」
「え~、ほんと~?そういうことさらっと言ってくれるから飯塚好き!」
何の話だよ。酔ってんか。酔ってんだろ。
 そのある程度持っているとして、とりあえず僕、あくい自身が今後どうするべきかは、なんとなく定まった。これ以上、おっさん相手にかわいい娘を売りつけるために嘘をつくところは止めよう。