あくいの孫

25歳でまだ大学生やってる人間です

グエル・ジェタークが生存したことの意味とは

 みなさん、水星の魔女23話見ましたか?いや~面白かったですねぇ。いきなりスレッタとエリクトの姉妹喧嘩から始まって、どう終わるんだろう......なんて思いながら、クワイエットゼロ内部でも、ミオリネとベルメリアさん、エラン5号君VSママンが始まって、誰か死ぬんじゃないかってそわそわするし、その間に議会連合のおっさんたちは、ガンダムお馴染みのコロニーレーザー的大出力兵器持ち出してくるわで、今回も濃厚すぎてめっちゃ良かった!
 そして、今回目玉の一つでもある、決着のついたグエルVSラウダの兄弟喧嘩。
グエル生きてて良かったー!あとシュバルゼッテは刀振り上げるモーションが侍っぽくてちょっと好きでした。とにかくよかったー!フェルシーよくやった!!!

 Twitterでもこの兄弟喧嘩で大盛り上がりで、「#水星の魔女」で検索するとこのシーンについての感想が上位占めてた印象でした。その中でも特に、「あの流れでよくグエル生きてたな」って感じのコメントが散見されました。
確かに、歴代ガンダムのなかで、あの流れならグエル絶対死んでましたよ、1stのララァしかり、Zのフォウしかり。そういう意味で今回グエルが生き残ったのは「歴史的快挙」だなんて感想まで。

 水星の魔女という作品自体、令和という新しい時代に初めてMSの戦争を描いたTVシリーズでありながら、歴代ガンダムのオマージュまみれというかなりの異色作。22話だけで言っても、白目剥いたアムロとミオリネ、キャリバーンとFAユニコーン、生身フェンシング、たぶん知らないだけでもっとあるでしょう。過去のオマージュを可能な限り盛り込みました!って感じがして、製作陣お疲れ様です、ありがとうございます。(生身フェンシングについては無理があろうと......)

 という風に、これまでの「ガンダム」という箱を令和に組み替えていくシステムがとられた中で、この「グエル生存」は唯一と言っていい、十八番破りだったんじゃないでしょうか。
 でも、1st seasonでグエルはヴィム殺しちゃってるし、これまで頑なに定番を踏まえていったのにここだけ何故?ヴィム殺した時との違いは?昨今キャラクター人気がすさまじいから、グエル殺すの躊躇った?なんて思いましたが、水星の魔女も「ガンダム」。であるなら、戦争のなかのヒューマンドラマとして、ただキャラクターが死ななかったこと以上に、伝えたいメッセージがあったのではないかと思ったので、それについて検証してみようと思います。
(参考作品として、筆者はVとAGEが見た事無いのでそれら省いたTVシリーズに関して触れていきます。Vに関してはいっぱい死ぬの怖いので......)

 

 そもそも今回の兄弟喧嘩及び1st seasonのヴィム殺しは、「ガンダム」の歴史で言えばどういう図式に当てはまるのか。おそらく類似例を挙げれば先ほど挙げたララァとフォウ、それ以外にもZZのプルやSEEDのフレイ、DESTINYのステラなど、キリがないでしょう。今回はガンダム史上の意味を理解するため、もう少し厳格な定義を設けてみます。
 まず、この2つに共通する点として挙げられるのが
①味方(に成り得る者)同士の殺し合い
②直接殺したことを後悔して、それを乗り越えて相手を理解する
の2点。①については言うまでもないので省きますが、②についてはグエルが直後に理解しているわけではないですが、後にジェターク社を継いでいることがその証左と言えるでしょう。

 では、この2点の定義は「ガンダム」の図式としてどうなのかというと、例えば1stガンダムの主人公アムロ・レイララァ・スン
アムロララァは直接戦う前に一度会っており、その時点で互いに惹かれ合っています。そして戦闘中でも、彼女はアムロに対して「貴方の来るのが遅すぎたのよ。」と言っており、逆説的に言えば、彼女とアムロが共に歩む可能性も存在していたわけです。②ララァがシャアを庇ったためアムロは誤って殺してしまうのですが、エルメス爆発直前のシーンで「君ともこうしてわかりあえた」と言っています。また、アムロは戦闘中、ララァから「守るべき人も守るべきものも無い」のに戦っていることを指摘され、憤っています。しかしア・バオア・クー最終決戦後、コアファイターで脱出したアムロは「まだ僕には帰れる所があるんだ。こんなに嬉しいことはない」と言っており、そういう意味でもララァの考えを理解したと言えるでしょう。

 もう一つここで挙げておきたいのはここ数年でも話題性の欠かないガンダムUCから、リディ・マーセナスマリーダ・クルス
①これについては少し微妙なところですが、実際マリーダはリディの説得をあと一歩のところまで来ていました。しかし、ビームマグナムに手を触れたことでそのまま撃ち殺してしまいます。ですが、マリーダが精神を通して改めてリディを説得したことで、リディは味方となっています。
②マリーダの説得直前、リディの中には彼を否定するミネバのイメージで埋め尽くされていました。しかし、精神を通して「落ち着いて周りを見渡せばいい。世界は広い。こんなにもたくさんの人が響き合っている。」というマリーダが声だけを聞かせたことで、それまでミネバに執着していた彼の中にようやく他の人の声が響くようになりました。

 他に該当しそうなところで言えば、Gガンダムのドモンと東方不敗ガンダムWのカトルとトロワ、Gレコのベルリとデレンセンぐらいでしょうか。Zのカミーユとロザミアも該当しそうに思えますが、これは直接手を下してはいても、カミーユはロザミアを殺したことを考えないように、仕方のないことと片付けているので②に当てはまりません。(これはこれできつい、そら精神崩壊するわ。)

 

 では、これだけ過去に殺してきた例があるわけですが、じゃあ殺して理解する描写の意味って何だ、という話。それにはまず、「ガンダム」における殺人についての考察から始めねばなりません。
 殺人とは究極の暴力です。それゆえ殺人にはそれに相当するだけの力を加える必要があります。素手であれば、腕力に応じてたくさん殴る必要がありますし、刃物ならば、正確に狙って刺したり切ったりして腕を振る必要があります。銃であれば、それを持って狙って撃って反動に耐える必要があります。じゃあMS(モビルスーツ)であれば?狙ってスイッチを押すだけです。先に挙げた三つは何らかの反動があります。素手なら疲れて拳は痛む。刃物なら腕が疲れる。銃ならその反動。もちろんMSが銃を撃った時、振動はあるかもしれませんが、自分で身体を動かして銃を撃つより疲れないでしょう。
 そのうえで大きく違うのが、相手の反応が返ってこないことです。「ガンダム」において敵のMSとの通信にはMS同士が触れ合っている状態、接触回線が開かれていなければいけません。なので、例えばビームライフルを撃って敵のMSを破壊しても、パイロットの断末魔は聞こえてこないですし、最悪死体も残りません。これは外伝作品の設定ですが、宇宙では音がせず、発生している音は全てMSの内蔵機能のため、人によっては設定音をゲームの効果音に変えて、恐怖を紛らわせていたという話もあります。(Ark Perfomance『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』より)
 何が言いたいかというと、それだけ自分の振るっている力に無自覚になりやすいということです。ですが、何か反応が返ってきた場合どうでしょう。アメリカではイラク戦争後、帰還兵のPTSDが社会問題化しました。それ以前にもベトナム戦争帰還兵がPTSDになった例も多く、『ランボー』でも主人公の帰還兵は戦時中のトラウマからPTSDと思われる症状を患っていました。また、『暴力の哲学』を書いた酒井隆史は、その本の中で人間と武器の関係性について、1992年にアメリカで公開された『juice』という映画の描写について「暴力的装置を人間が手段として使いこなす、ということは幻想に過ぎない。むしろいつのまにか、人間の方が暴力的装置に使いこなされ、振り回される」と述べています。
 では、先の挙げたアムロの例ついてはどうでしょうか。アムロはそれまで、戦うことについて無自覚でした。基本的には目の前にやって来た敵を迎え撃つということが多く、それまで見た敵の死はランバ・ラルくらいでしょう。アムロララァを殺した後、ようやく「取り返しのつかないことを」したと自覚しています。アムロにはララァを殺すつもりは無かったのでしょう。そのトラウマ的体験を経てようやく自らの力、ニュータイプ(NT)に自覚的になっていきます。その後最終決戦に向かったアムロは、当初シャアとの闘いに執着しておらず、「本当の倒すべき相手」(ザビ家)を認識し、その力の使い方を自ら決めています。
 リディの例はもっと個人化された感情が含まれています。そもそも彼が敵対した理由の一端はミネバという自分が選んだ女性に否定されたことにあります。もちろん最初は同じ血統に囚われた立場であるミネバを救いたいという思いから来ていましたが、途中ミネバが自分の意志で動く事を決めたことで、リディの庇護下を離れます。ミネバを救うことで疑似的に自らも救われようとしていた彼はミネバに対する執着を強めます。その結果、彼の中で自らを否定する声が増幅してしまい、その否定に対抗しようとビームマグナムでマリーダを殺してしまいます。しかし、そこで自分が殺した相手の声を聞いたことで自らの行いの取り返しのつかなさを理解し、「俺は何をしたんだ」と呟いています。そして、リディもNTとしての力に自覚的になります。
(ちなみに、銃は男性性の隠喩とも見ることができ、否定したミネバを銃で撃つことで彼女に支配的になろうとした、要は自分は女性を支配できる男であることを示そうとした、とも取れます。そういう意味ではミネバは非常に自律した女性として描かれていたように感じます。)
 以上のように、彼らは自らの力に対して、その程度を正確に把握しておらず、その使い道さえ、本当の意味で自由に決めることができなかったのです。つまり「ガンダム」における殺人は、殺した側がその力に自覚的になる、つまりは理性を獲得するきっかけとして捉えることができるのです。
 

 では前置きが長くなりましたが、水星の魔女においてはいかがでしょうか。
 まず、1st seasonでのヴィム殺しについて。グエルは当初学園最強のパイロットであり、好き放題力を振るうガキ大将的キャラでした。しかし、スレッタに敗れ、その後も決闘に連敗したことで、父ヴィムから絶縁を言い渡され、学園からも追放させられてしまいました。この時点でグエルはミオリネからも指摘されていますが、「父親の言いなり」である自分を恥じています。その中でスレッタ・マーキュリーという自分を超える存在に出会い、彼女と並ぶ存在になろうと意識し始めます。
(この時点でリディに対するミネバとは違い、スレッタを庇護するものではなく、目指すものとして意識している点に違いがあります。)
 そして問題のヴィムとの戦闘ですが、当初グエルは自分を狙うヴィムのディランザ・ソルを撃つのを躊躇う描写があります。しかし、死にたくないという思いに加え、スレッタに並び立つ男になることを考え、力を振るう決意をします。そしてデスルターのヒートナイフでコックピットを刺しました。しかし、この瞬間のグエルにはコックピットを刺した自覚がありません。それは当然で、これまでの決闘ではMSに敵のコックピットを狙わないようシステムで制限されていたからです。グエルにはコックピットを刺したら相手が死ぬという単純な力の帰結さえ理解できていませんでした。そして、その相手が父ヴィムであることがわかります。父を乗り越え、好きな相手に並び立とうとしたら本当に父を殺してしまったのです。
 その後拉致され、地球での凄惨な体験を経て、父との繋がりを維持するためにジェターク社を継ぐことを決意します。グエルはこれ以降シャディク戦、そしてラウダ戦の2回MSにのりますが、2回とも不殺を徹底しています。これが今までの「ガンダム」との違いです。これまでの「ガンダム」では、あくまで力に理性的になったというだけで、殺人を躊躇うことはありません。それは彼らが軍人だったからで、向かってくる敵を殺す必要がありました。自身の殺人に対する罪の意識というのは、そのトラウマ的描写のみで、役割を果たすことがある種贖罪だったのかもしれません。しかし、グエルは自身の殺人を徹底的に秘匿し、弟ラウダにも話していません。不殺を貫いたのも、罪の意識ゆえでしょう。つまり、これまでの「ガンダム」と違い、力に理性的であることは、殺人をしないことと見なし、また殺人は一生消えない罪として抱えていくという風に受け取っているのです。
 このように受け取れる描写はグエル以外にもあり、例えば23話でエラン5号がケナンジに対し、「今度は死なせないから」と皮肉っていましたが、軍人であるケナンジに対しても、殺人は罪であると意識させているのです。あとはスレッタがミオリネを守るために人を殺したシーンも異常にグロテスクに描写されていました。これも殺人という行為が異常であることを強く示しているのではないでしょうか。

 では、ようやく本題の兄弟喧嘩です。ラウダは、父ヴィムがテロに巻き込まれて亡くなり、ジェターク社の代理のCEOを務めなければなりませんでした。しかし、尊敬する兄グエルが突然学園に戻って来てジェターク社を継ぐと言い出しますが、以前より会話がしてもらえません。またノレアの暴走のために恋人ペトラも意識不明になり、しかもその兄が事故とはいえ父親を殺したことを偶然知り、もうめちゃくちゃです。とりあえず一番近くにいたミオリネが悪いと決めて、ミオリネを殺すことを決意します。ここで少しリディの例との類似としているように見えますが、リディは自らを肯定するために動いているのに対し、ラウダはグエルをミオリネから取り戻すために動いているため、この時点で力を振るう理由が大きく異なります。
 シュバルゼッテを駆る彼は、機体の性能差でグエルのディランザを圧倒し、戦闘中これまで尊敬していた兄を超えられると思い込みます。そしてラウダは、自分の言うことを聞かないグエルを父殺しの罪やミオリネを正さない罪から解放し、自分がその罪を背負うために、グエルを殺すことを決意します。ここでグエルは、その力からラウダを開放するためにわざとシュバルゼッテに刺されることで、その源である額のシェルユニットを破壊します。グエルを刺した事、そしてガンダムという力の象徴を失ったことで、ラウダは冷静さを取り戻します。しかし、グエルのディランザは爆発してしまう、といったところでフェルシーが消火剤(?)を撃ち込んで、爆発を回避、グエルは生存します。
 先ほども述べたように、このシーンでのラウダの力を振るう目的は、ミオリネからグエルを取り戻すことです。更に言えば、昔と違い何も話してくれなくなったグエルにもう一度頼られるようになることと言えます。当初はそのためにミオリネを殺そうとしていましたが、途中からその手段がグエル本人を正し、かつての尊敬する兄としてのグエルを守ることへ変化しています。それはシュバルゼッテの行き過ぎた力によって、兄を殺すという手段が手に入ったからであり、そのために本人を殺しても構わないと考えることができたのでしょう。
 これについて改めて考察すると、水星の魔女特有の考え方として見えてくることが2点あります。
 1つ目は、力は取り上げることが可能である、という点です。ラウダの搭乗機はもともと専用のディランザで、決闘でのランクはグエルより下です。実際グエルほどの実力はなかったのでしょう。にもかかわらず、シュバルゼッテによってグエルを超える力を付け、その力で兄を殺そうとしました。ですが最終的にシュバルゼッテは額のシェルユニットが破壊されたことでガンダムとしての力を失います。この瞬間ラウダは冷静になるのですが、これは行き過ぎた力を持つことで理性を失うのであれば、力を持たせなければいい、という理屈になります。基本的にこれまでは力に相応の理性を持つことを掲げ、強い敵の力にはより強い力で対抗してきた「ガンダム」にとって新しい指針と言えるでしょう。
 そしてもう一つが、子どもが無理に大人になる必要はない、ということです。これが今回グエル・ジェタークが生存したことの意味ではないでしょうか。これまでの「ガンダム」では力を持った主人公が、戦争に巻き込まれる中で様々なことを経験し、その力に相応しい役割を担っていく、というのが王道でした。水星の魔女は学園ものとして始まり、主要登場人物の大半は子どもです。これ自体は「ガンダム」らしいと言えます。しかし、本作ではその子どもである部分が強調されています。ケナンジさんがいい例です。ラウダについては、兄がいなくなり、父が死に、そして会社を守るためにいきなりCEOを任され、グエルが戻ってきたときには安心のあまり気絶しています。しかし、その兄は前ほど頼ってくれなくなり、唯一の支えの恋人も意識不明になり、とうとう一人になりました。ラウダは兄を殺すことで、ラウダ・ジェタークとして無理に一人前になろうとしていましたが、ガンダムを破壊されたことでそれができなくなりました。ここでグエルが死んだら、誰がラウダを子どものままでいさせてくれるのでしょう。
 そしてそれはグエルにも言えて、グエルは一人で父殺しの罪を背負うことを決めていました。それはグエルが自身をもう大人だと思い、一人でやらなければならないと思っているからです。しかし、そんな必要はなく、辛いことは共有していい兄弟がおり、そしてそれを見守ってくれる仲間がいるのです。もちろんそれを象徴するのはフェルシーです。なんならフェルシーは作中でも子供っぽいキャラとして描かれています。そんな彼女に喧嘩を諫められるようでは、彼らもまだ子供です。
 つまり、今回グエル・ジェタークが死ななかったことは、ラウダだけでなく、グエルも含めて、彼らはまだ子供であり、ゆっくり周囲と一緒に大人になっていけばいい、という製作陣の願いが込められているのではないでしょうか。

 

 この解釈の是非もあるでしょう。この価値観の是々非々もあるでしょう。しかし、これ自体が願いであることを忘れてはいけないと、私はそう思います。最終回楽しみにしています。

垢抜ける

今年25歳、この身体と四半世紀過ごしてきたが、まだまだ変化しなければと思う時がある。
朝起きて鏡に向かうと、ボサボサの髪とまだらに生えた髭が見えてきて、次美容室行く時は別の髪型を試そうとか、やっぱり脱毛した方がいいだろうかとか、ついそんなことを考えて洗面台に寄っかかってしまう。
20歳のとき、化粧をしてみたら何か変わるんじゃないかと思って、なんの下調べもせずに、薬局に行ったことがあった。化粧品売り場に置いてあるもので、青髭を隠せないかと片っ端からスマホで調べていると、40過ぎくらいの化粧品スタッフの女性が声をかけてきた。
「何かお探しのものはありますか?」
後から気づいたが、そのとき私は、化粧品売り場を1人でうろうろしている不審な男だった。それに気づかず、プロの人に聞けると思って少しテンションの上がっている状態で、無邪気に返答していた。
青髭隠したくて、化粧を始めてみたいなあと思ってみてたんですけど…何かいいのありますか?」
それを聞いたスタッフから、少し呆れたような間を置いて
「そしたら、まず毎朝きちんと髭を剃って、そのうえで化粧をするの。日中も化粧落ちとかするから、気を抜かずにトイレに行った時は落ちてないか確認する。そういうのが必要になるけど、あなたできる?」
こういう何も知らない若造が来たら、先達は優しく導いてくれるものではないのか。少しムッとしつつ、それ以上にそんなに気負ってするものなのかと、疲れ果てながらとぼとぼ薬局を背に帰った。
2023年の今、化粧品売り場にもメンズメイクのコーナーができる世の中になり、私も少しだが化粧品を買った。だがやはり、毎日というわけにはいかず、休日の気が乗った日にだけ少し試してみる程度だ。確かに化粧をすると青髭が隠せるし、見た目も良くなってテンションも上がるが、日中落ちないか不安になっていちいち気にしてしまう。垢抜けるための変化の余地がまだあると思いつつ、その先を歩き続ける自信がないだけなんじゃないか。

5月11日

高円寺

朝ちょっとだけ地震で起きた。でもすぐ寝てた。寝起きはバカなので。

起きてからいつものサラダチキンキャベツ蒸しを食べて会社説明会を受ける。時間かぶって授業休むの連絡してなかったけどまあいいか。よくねえよバカ。
16:00から明日の面接対策でエージェントと面談になっていたが、その後病院に行く関係で高円寺に行く必要があった。というかそれを口実に高円寺に行きたかった。せっかく交通費かかるし。


着替えて出かけるとめちゃくちゃ雨が降っていた。ゲリラ豪雨だったらしい。リモートワーク可能なところを探してふらふらしていた。LIPというところに行こうとしたが、閉店していたのか一時休業なのかわからないが閉まっていてがっかりした。そのままふらふらしたが最終的に座・高円寺の併設カフェに行った。リモートワークも推奨されていたので、ここなら話しても嫌な顔されなさそうだ。
ベトナムコーヒーを注文した。前原宿の喫茶店で飲んだものがおいしくて頼んでみたが、前の店ほどコンデンスミルクが主張してこなくて少しがっかりした。またあそこ行こう。
オンデマンド授業を受ける。この先生の声は音質がいいからか、ラジオというかASMRを聞いてる気分になる。声は好き。受け終わって16時頃になったので、エージェントとお喋りした。終わり。
終わってから病院の時間まで高円寺と三軒茶屋の飲み屋をインスタでディグっていた。使い方合ってない気がする。来週おれが執着している先輩と三茶に飲みに行くのと、再来週後輩の女の子2人と高円寺に飲みに行くので調べまくっていた。店調べるだがそもそも好きなのもあるが、お猿さん脳ミソしてるので女の子がいるというだけで頑張れてしまう。おぢさんにならないよう気を付けよう。
時間になって病院に行く。前の人が長かったからかいつもより待たされた。こういう病院だし仕方ないよ。だが、いつもの薬局が20時までの営業だったので急いで帰るハメになった。

帰ってからレトルトハンバーグがあったのでロコモコ丼を作ろうとしたが、油が足りなかったし、キャベツを水にさらしてなかったので上手くできなかった。ザコモコ丼。
明日の面接を考えて緊張してたからか、寝る直前めちゃくちゃ酒飲みたくなったし何か食べたくなったけど布団に潜ればなんとかなるのでそれでなんとかした。でも寝たのは2時くらい。〆

5月10日

何してたかな。嫌な夢を見て朝起きたことだけは覚えてる。ゼミの人たちに叱られた後、学校で追われて刺される夢。朝からもやもやしていた。
11時から今日最後の展示会を見に行こうと思っていた。だが、間に合わなそうな感じがする。むしろこの感じは行かないなと薄っすら思っていた。朝飯にいつものサラダチキンキャベツ蒸しwithポテサラを錬成し、朝飯を終える。13:00から会社説明会で今11時過ぎ。もう展示会行くのやめようと思った。12時になりパスタを食べて満足する。食べながらスキップとローファーを見てた。人間臭いっていうのはハッピーエンドだから言えるのだろうなと思えてしまう。でも面白い。ストーリー重視なので推しとかはいないです。

説明会を受け終えて外のカフェで作業することにした。その前に面接へ向けて動かない腕時計を直すために近所のミスターミニットに行ったが、持ち込んで秒で「あー、これソーラー充電だね」と言われて、ちょこちょこ秒針が動き出すのを唖然として見ていた。
スタバに入ってPCを開く。PCを開いて、久々に燃え殻さんのラジオが聞きたくなったので流しながら日記を書いていた。シングルタスクしかできないのでラジオの内容はあまり耳に入ってなかったが、声が好きだからこういうのをよくやる。日記は朝のもやもやを全力でぶつけてしまった。だが大声でカラオケで歌ってるみたいにすっきりした。日記を書いていて久々にきちんと自分に作用した気がする。

 

バイト先

17:00からのバイトに行く。最初30分くらい暇していたが、途中で話が面白いお客さんが来てくれてめっちゃ楽しかった。今回は飲食店シミュレーションゲームのアプリ作るならどうする、みたいな話をした。高校の同級生と飲み屋やりたいなんて言ってたのを思い出して余計楽しかった。
妙にふらふらするなと思ったが、ワンオペなので休めない。20時過ぎにゼミの先輩と友人が来た。半トラウマ状態だったが、日記を書いたおかげと、接客モードになってたからか、だいぶ余裕をもって話せた。あとふらふらは賄いを食べたら回復した。

バイト終わり、いつもの飲み屋に行く。久々に会うスタッフの方だったので軽い近況報告をして、他の久々に会う人としゃべって、一杯で帰った。帰ってまた、風呂に入らなきゃというタスクが頭の中をぐるぐるして、結局風呂入って寝たのは2時過ぎだった。〆

5月9日

今日は11時過ぎに面接があって、それからすぐ大学へ行って、夜はゼミの飲み会。忙しい日だ。

昨日寝たのは3時過ぎだし、正直かなり眠い。7時半に起きたが、もう一時間と思って8時半まで寝た。本当は1限があったが、面接があるのでと言って休んだ。本当は時間的に間に合うが、その方がメンタル的にも安定するし、スーツもすぐ着替えられるからしわにならないだろうと考えはあった。いつものサラダチキンとキャベツを茹でたものを食べて着替える。GW中クリーニングに出せていなかったので微妙にスーツにしわがある。ジャケットじゃなくてズボンなのであまり気にはならないけれど。
スーツに着替えてPCの前に座る。面接対策のワードファイルを開いて、一通り口にする。なんか微妙に緊張している。昨日対策できてなかった分も調べて簡単に補強する。自分の者になっていない感じがするが、もう時間がないしやるしかない。11:40、面接の時間になった。

 

大学

面接を終えて、すぐ着替えて電車に乗る。面接はあっけない感じがした。昨日やってもらった対策一つも役に立たなかった。まあ対策してないよりは気が楽だったが。時間が押していたのか、面接官の焦っている感じが少し感じられた。とりあえず楽しく会話できはしたが、受かる理由も落ちる理由も想像つかないので不安だ。結果は、また1週間以上待つのだろう。電車でスマホを見つめながら気持ちはうわの空だった。
授業には少し遅れて着いた。昼飯を食う時間がなかったのでコンビニでパスタサラダを買って行った。席についてからすすって音を立てると迷惑なことに気づき、ヌーハラしないよう、噛んで食べた。
その後語学の授業があった。後輩二人と一緒で、最初は気まずさがあったが、今はむしろ気が楽になってる。不思議だ。挨拶だけして前の席で後ろの二人の会話を聞いている。最近意識して黙る時間が増えた。自分が空間から切り離されて完全な傍観者になっているみたいな、そういう感覚を自分の頭が作り出している。落ち着けていい。
授業の途中で電話がかかって来て抜けた。折り返すと今日の面接先からの連絡だった。合格なので最終面接に来て欲しいと。嬉しかったが、本当に選考されているか不安になった。誰でもいいから入れてるところは使い潰されそうでなんか嫌だ。
最後ゼミの授業があって、人の発表を聞いてコメントするだけだったが、今日はいいコメントができた気がして気持ちよかった。役に立っている気がする。空間にいる理由ができる。

 

阿佐ヶ谷

ゼミ終わり、阿佐ヶ谷の飲み屋祭りに参加する。自分は面接終わりで息抜きたかったし、ゼミの人とも飲みたかったので誘った。武井が、金がないから行かない、と言っていたが、かなり来ることになっていたのでやっぱり来ることにしたらしい。飯塚と、他のゼミ生自分含めて6人だった。研究室を出る前に来週の自分の発表について、先輩に軽い相談をする。色々終わって、電車に乗る。中央線の開いた窓から見た夕焼けがきれいだと誰かが言ってた。阿佐ヶ谷に着いたのは19時くらいだった。
1人遅れてくるので10枚チケットを買って2軒回ることにした。人数も多かったので遠くの店に移動する。店について各々酒を頼んで駄弁った。休学明けで今学期からゼミに参加する人もいたので初めて一緒に飲む人もいたが、ノリでしか話していなかったので特に困ることはなかった。ただ武井がひたすら俺のよくない話をする、笑いながら。周りもそれに同調するし、おれもそれに笑っていたが、お腹のあたりが苦しかった。時折突っ込むと、「だからダメなんだよww」なんて言われた。ああ昔も言われたなと思って、もっと苦しくなった。

「おいしいポジションなんだから」「みんなから愛されてるんだから」なんて言われて、周りがからかってくるのを肯定しろと言ってくる。普段は気にならない。むしろ多少抵抗してみせて気を良くさせようと思ってすらいる。これが正解かはわからないが。ただ時折きつくなる。きつくなったとき手が出そうになるし、泣きそうにもなる。小学生の頃の幼い自分から、今も全く変わってない、ダサい自分がフラッシュバックして嫌になる。「だからモテない」「だからダメ」なんて言われ続ける。自分の中でも引っかかってそのまま、頭の中で繰り返された。

23時半くらいまで飲んで、二次会に行く人もいたが、家に帰った。帰って、カップ焼きそばにソーセージともやしを加えて食べて、風呂にも入らず寝た。久々に怖い夢を見た。〆

 

追記
そういえば最近、飲み屋にいる仲良い人にも、似たようなことをやってしまっていたことを思い出した。今度謝ろう。ごめん。

5月8日

大学

起きたが体が動かない。7時くらいだった。親父が風呂に入っている音を聞いて、二度寝の言い訳を作った。結局起きたのは9時半。10時から講義だが、早くもサボってしまった。昨日頑張ったんだけどなあ。とにかく無理矢理でも体を動かして風呂に入る。大学へ行く準備をしていると、親父から「内定はまだ?」みたいなことを聞かれた。最近進捗は報告していたのにと思い、聞かれてイラっとした。ぶっきらぼうな返答をした。12時過ぎくらいに家を出た。

授業開始ギリギリに着いた。そのくせ14時から会社説明会だったので抜けることを先生に伝える。申し訳なさがきつい。しかも授業を受けながら日記を書いていた。時間手前になり、授業を抜けて説明会を受ける。画面オフだったし、集中力は全くなかった。めんどい。説明会を受け終わり、ESを書く。これも集中できない。16時になって面接対策のためにキャリアセンターへ行った。二次面接初めてでテンプレも知らないのでぼこぼこにされた。まあ知らないよりいいかと思って帰った。
最寄り駅に着き、帰ってもやらなさそうなのでコメダに行く。コメダに着いてからアメリカンコーヒーを頼み、PCを開く。書き途中のESを書きあげようとしたが、やっぱり集中できない。鬼滅の刃とか見てた。結局17時半くらいから初めて20時過ぎに終わった。帰りに近くのブックオフによって本を漁り、あまりに良くまとまったワインの本があったので買った。あとドンキによってワックスとスプレーを買って帰った。

帰ってから明日の面接対策をしなければと思ったが、全く動かない。親父は出張で明後日までいないので一人だ。LINEを見たら部活のグループに連絡が入ってる。いつもOBOGへの連絡担当をしてる先輩の負担を少しでも減らそうと、OBOGの方にも連絡したが、先輩が色々詳しい事情を聴いてきてめんどくさくなってしまった。申し訳ないと思いつつも、イライラしていた。飯を食い終わった後、布団にもぐってしまい動けなくなった。ずっと動画を見てたが、頭の中で面接対策と、皿洗いと、風呂に入ることがぐるぐるして眠れなかった。結局見る気もなかったワンピースのフィルムレッドを見てから皿洗いして風呂に入って寝たのは3時半だった。〆

5月7日

北の家

今日は13時に北の家へ行く予定だ。昨日まで北は大阪に行っていたらしく、お土産のチーズケーキがあるのでおいで、ということだった。チーズケーキには抗えないので行くことにした。

 

朝起きてご飯を食べる。キャベツとサラダチキンを水を入れてレンチンしてポテサラをぶち込んで食べる。最近の朝飯はこんな感じだ。顔がテカりにくくなるし、胃にも優しいからちょうどいい。家に行く前に勉強しようと思っていたが、結局手に着かなかった。ボーっとしていたら出発時間を過ぎてしまい、急いで家を出た。

最寄り駅に着き、北と合流する。20分ほど遅れて申し訳ない。最近北と会うときは毎回遅れている。申し訳ない。昼飯がまだだったのでおすすめのラーメン屋に行く。海鮮系のあっさりした塩で、久々に美味いラーメンを食べた気がする。一緒に頼んだチャーシューライスも良かった。だけど、店主が気難しい人っぽくて、店員に機嫌悪そうに指示していたのが嫌だった。ラーメン屋はラーメンを食う所だろうので、機嫌悪い店主も多いが、もれなく嫌いだ。こっちが怒鳴り返したくなる。
食べ終わり、北の家に行く。もう来るのは3回目か、慣れたものなので、雑にかばんを置いた。普段からお世話になってるし、今日会うのもわかっていたので、自分も静岡で買ったお土産を渡した。今回はお互い作業のために会ったので、専攻語の課題をやるが、書いていて辛い。こんなんでいいのかわからないと思いつつとりあえず書き続ける。16時くらいになり、一度チーズケーキを食べる。りくろーおじさんのチーズケーキだ。久々に食べたが、味も触感も覚えていて、それほど好きだったと感じる。チーズケーキを食べ終わり、ESに手を付ける。久々に書く気がするし、まとまらない。結局完成せず、19時過ぎになったので、ご飯を食べに行くことにした。

近かったので三軒茶屋へ行った。近々先輩と二人で飲みに来る予定があるので、北のお気に入りの店を紹介してもらう。Google Mapでピンだけ立てておいた。明日大学あるし、飲むつもりもなかったのでやよい軒に行く。こういう所に来ると、迷った末にチキン南蛮をいつも頼んでいる気がする。かつ丼の油っぽさを避けようとしているはずだが、タルタルソースもたいがい脂っぽい。でも後悔しないのでこれでいいのだ。
食後、ドンキに行く。北が彼女とのことを考えてコンドームを買いたいそうで、付いてきて欲しいと言われた。別に付いていく必要もなさそうだが、面白いので付いていった。今回が初彼女というわけじゃないが、そのときしなかったらしく、そのことを後悔しているそうだ。頑張れと思いながら、愛のあるSEXを予定している彼を、羨ましくも思った。
そのまま解散して、家に帰る。家に着いて幼馴染の藤原と通話する。藤原とは今日スプラのフェスを一緒にやる予定だったが、自分の課題が終わってなかったのもあって、通話だけ繋ぐことにした。藤原も旅行に行っていたようなので、その話を聞き、藤原のスプラをやっている様子を見る。一緒になって味方に文句を言いながらやっているのはまだ楽しかったが、人が一人でそれをやっているのを見るのはきつい。というか正直それを一緒にやっていても嫌な時がある。ただの啼き声だと思うようにしている。早めに終わったので少しスプラを一緒にやって、藤原がおすすめの文ストをウォッチパーティーで見て解散する。そのまま眠くなったので寝た。〆