あくいの孫

25歳でまだ大学生やってる人間です

10月14日

神泉
 来週は飲み会と高尾山に行く予定があるのに、今口座の残高には3桁(万からの単位じゃなくて本当に零からの意味)しかない。これはさすがに洒落にならないと思い、数日前からこの土日で入れる単発バイトを探し続けていた。原則当日払いのところがいい。だが、昨夜申し込んだところから連絡がなく、職場との交通時間を考えると、もうギリギリだ。こういう時無視されてるかもしれないと考えると、妙に応える。
 その時に、もう一件新しいバイトの応募が出た。応募すると即決され、嬉しく思うと同時に、なぜか「やってやったぜ」という気持ちが湧いてきて、先に申し込んでいたところの応募を勢いよく取り消していた。
 本当にバイトが決まらなければ、久々に運動しようという気持ちもあり、部活に顔を出そうと思っていたが、やはり行けないと断った。後輩に期待させといて行けないというのは申し訳ないので、来週は少し予定をずらして行くと約束した。
 バイトが始まるまでは時間があるので、卒論でもやろうかと思ったが、いまいち動けない。色々あって気持ちは定まってきたが、後ろに予定があったり、他にやることがあったりする、こういうところでやはり弱いなとも思う。仕方ないので、バイト先近くの公園で本を読むことにして、家を出ることにした。

 神泉で降りたのは初めてだった。公園は見つけていたが、色々散策してみたくなるような街並みに感じた。いい飲み屋やカフェが多いと、やはり開拓欲が湧く。
 1時間前には着いたので、公園で本を読んでいた。公園には鉄棒と公衆トイレとベンチくらいしかなく、ベンチの周りには煙草の吸殻が散っていて、下にはビールの空き缶が整理されていた。3つあったベンチのうち2つには、似たような年頃の男が1人ずつ座っており、空いている1つに座って、ベンチはすべて埋まった。途中親子が来て、何かを投げ合って遊んでおり、妙に居心地が悪かった。

 バイトの時間になったので向かった。今回のバイト先はカフェっぽいところで店内には女子女子女子男子女子といった感じで、今年25になるムサい酒飲みには、またも居心地悪く感じた。
 着替えを借りて、とりあえず初めに「真面目にやります」という顔と、客への挨拶だけはハキハキとやった。なんとなく周りからは自分が、「真面目だがから回っているちょっと残念な奴」みたいな評価がついてると思っている。でも悪く言われたことはないので、初対面はこの感じでいいだろうとも思ってる。
 店長だけ男性で、他のスタッフは女性だった。けっこうラフに楽しくやってるようで、お喋りしながらやってて作業は遅いけど、特に何も言われない。なんというか、「令和の職場」って感じがした。自分のバイト先と比較して、むしろ気が楽になった。
 ホール担当でお客さんにサーブをする役割だったが、ムサい自分をどう場に馴染ませようか考えていた。とりあえず、いつもより少し低めの声にして、「無骨だが気のいい兄ちゃん」にしてみた。少しは恥ずかしくなくなった。
 他のスタッフがいなくなり、店長と2人きりだったものの、何事もなく淡々と時間が進み、最後カフェの雰囲気には、少し大人すぎる男女が残っていた。最初は会話内容から不倫かとも思っていたが、もう少し聞くと離婚した女性と未婚の男、のようだった。たぶん。店長と予想しながら笑っていた時間は楽しかった。「飲食の醍醐味の一つは人間観察だよね」って。

 バイトが終わって、なんとなく渋谷まで歩いてみた。渋谷に来たのは1ヶ月以上振りだった。少し、キャッチの女子が増えた気がして、少しむなしい。どんどん変な街になってる気がする。むなしさから逃げるように、電車に乗って帰った。